優しい人たち

b0109481_1511413.gif2005年もあとわずかですね。
 皆様、どんな一年をおすごしでしたか。

私が今年観たラストの舞台は、パルコ劇場の『12人の優しい日本人』。そういえば、今年観た口開けの一月の舞台も、パルコ劇場の『なにわバタフライ』。どちらも三谷幸喜さんの作品でした。
 三谷さんのお芝居はスゴイ人気だから、チケットがなかなかとれません。そんななか、いつも席をとってくださるEmiさん、本当にどうもありがとうございます。感謝!
 『なにわバタフライ』は、浪速の大芸人であり大女優であるミヤコ蝶々さんをモチーフに描かれた、ひとり芝居。戸田恵子さんが熱演してらした。おしつけがましい熱演じゃなくて、さらりとした熱演。その様が、かっこよかったです。
 三谷幸喜さんと戸田恵子さんは、ティム・バートンとジョニー・デップのような関係だわ、なんて思います。創り手が演じ手の魅力を最大限に活かし、演じ手がその作品に、さらに輝きを与える。創り手と演じ手の相性がとてもいいという感じがするのです。
 戸田恵子さん。派手さや華麗さはありませんが、その確かな演技力と、細い体の真ん中に、がっしりと一本通ってる芯の強靱さに、見るたび、感動をおぼえる女優さんです。
 ミュージカル『オケピ!』(2000年・2003年再演)の「サバの缶詰めが大好きなヴァイオリン奏者」の役も素敵でしたけど、戸田さんが演じた舞台でいちばん好きなのは、『温水(ぬくみず)夫妻』(1999年)です。
大雪で不通になってしまった駅に、偶然居合わせた一組の夫婦と作家太宰治。妻のほうは、昔、太宰の女だった……そういう設定で、太宰を唐沢寿明さん、夫を角野卓造さん、そして妻を戸田さんが演じてらした。
 雪に振り込められ、ろくな暖もとれず、食料もない駅に閉じ込められてしまった三人。このままでは全員凍死してしまうかもしれない。駅の待合室にはそりがあり、ここから脱出するには、それを使うしか手立てがない。けれどそのそりは小さくて、全員が乗ることはできない。誰かひとりは、この駅に残らなくてはならない……。そんな、命をかけた選択をするとき、人は、自分にとっていちばん「大切な人」が誰なのかに気づく、といったお芝居です。昔愛した男と、いま暮らしをともにしている男。その二人にはさまれた女性の心の奥が、観ているものに、せつなくほろ苦くあたたかく伝わってくる名演技、名舞台でした。あのお芝居、再演してほしいなあ。
 2006年の年明けに封切りの映画、『THE有頂天ホテル』では、戸田さんはアシスタントマネージャーの役。三谷作品に、なくてはならない名女優戸田さんが、今回はどんな演技を見せてくれるのか、楽しみです。
   
 さて、『12人の優しい日本人』。これは、シドニー・ルメット監督『十二人の怒れる男』に触発され、「もしも日本に陪審員制度があったら」という発想から三谷さんが書いたお芝居で、初演は1990年。映画化もされました。
 被告は、深夜の車道に男を突き飛ばした女。男は車にはねられ死んでしまう。彼女の行為は過失なのか故意なのか。無罪か、有罪か。
 12人の、年齢も職業も生活環境もそれぞれまるで違う男女が、陪審員室で議論を繰り広げます。陪審員1号から12号までのキャストは、こんなメンバー。浅野和之さん、生瀬勝久さん、伊藤正之さん、筒井道隆さん、石田ゆり子さん、堀部圭亮さん、温水洋一さん、鈴木砂羽さん、小日向文世さん、堀内敬子さん、江口洋介さん、山寺宏一さん。
 江口洋介さんは、今回が舞台初挑戦。ナマ江口さん、足が長くてすらりとしていて素敵でした。江口さん演じる、ミステリアスな陪審員11号は、映画では、確かトヨエツが演じていましたっけ。足の長い人向きの役なのね(笑)。
 12人は、被告について、事件について、議論を戦わせます。他人の状況に思いをめぐらすとき、人は自分の身になぞらえて、自分の立場や経験や状況を当てはめて推量するのだということが、よくわかるお芝居です。そこには個人個人の勝手な思いこみやエゴが透けて出てくるわけですが、でもそれでも、「他人」の状況を想像するという、そのこと自体が、優しいことなのではないかと思います。
 日々のニュースを見ていて思うのは、他人の状況を推量、想像すらできない、優しくない人が、日本には増えてしまっているのだろうかということです。いや、こんなふうにいっている自身も、はたしてどうなのかと。
 人間はエゴな生きものです。だからこそ、それを自覚した上で、みんなが「優しい人」になれば、この世はもっと住みやすくなるのでしょうね。自分のできうる限りで(できうる限りです。無理はしない、無理は・笑)優しい人になりたいなあ……そんなことを思う年末でした。

 2006年が、皆様にとって、どうか、幸せいっぱいの年でありますように!

12月27日

by makisetsu | 2005-12-27 17:43 | 映画・舞台の感想など | Comments(1)  

Commented by ルーシー at 2007-01-26 13:36 x
はじめまして、「十二人の怒れる男」で検索して来ました。

 私もこの作品が大好きで何度も観ています。詳細な記事ですね~!

最近のきらびやかな映画と比べると、密室での男たちの激論という地味な設定(笑)ですが、テーマはとても深く勉強になりますね~。

 私も今回ブログで「十二人の怒れる男」を記事にしました、よかったら一度いらして下さいませ~ではまた!

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