チョコレート工場

ふ~、すっかり秋らしくなって、ほっとしています。
 子どもの頃から暑いのが苦手でしたが、この夏は特にツラかったですね。仕事をするのがせいいっぱいで、メッセージを書く元気がなく、ずいぶん間があいてしまいました、ごめんなさい。
チョコレート工場_b0109481_0561453.gif さて最近観た映画といえば、もちろんこれです。『チャーリーとチョコレート工場』。
 原作ロアルド・ダール、監督ティム・バートン、主演ジョニー・デップと、「大好き」の三点セットですから、もうそれだけで文句はない。とはいえ、文句をつけたい人には、突っ込みどころの多い映画かなあという気もしましたが(笑)。
 児童文学のロングセラー『チョコレート工場の秘密』を映画化したこの作品。板チョコの包み紙の中に隠されている金色の券に当たった、チャーリーを含む五人の子どもたちが、おいしいお菓子をつくる秘密工場に招待され、そこで奇想天外な場面があれこれ繰り広げられるという展開は、原作通りです。
 監督も「原作に忠実な映画にしようと思った」とのことですが、そこはそれティム・バートンのこと、ダールの人並みはずれた発想、その「ヘン」なところを、さらにたっぷりふくらませちゃって、「ヘン」の何乗にもしちゃって、ダール色以上にバートン色がギラギラ出ている映画でした。シニカルでシュールでアホラシくて、キモおもろかったです。
 チョコレート工場のオーナー、ウィリー・ウォンカ役のデップ様は、顔は白塗り、髪型は短めのオカッパで、ちょっと歯が出てるし(古いタトエですが『おそ松くん』のイヤミみたい)演技もつくりすぎな感じですが、そのキモかわいさがよかったです。そういえば、こないだテレビで見たインタビューで、デップ様、こんなふうにおっしゃっていました。
   
 僕が試したい表現は、大きな失敗になるかもしれない。大失敗でみんなからバカにされるかもしれない。それでも挑戦する。(中略)。挑戦することが大事なんだ。
  
 ご自身の現状に、あぐらをかいていないところがステキ。それに挑戦といっても、肩に力を入れてるんじゃなくて、役づくりを、表現の仕方を、楽しんでる、遊んでる感じがいいなあと思います。
 楽しんでる、遊んでるということでいえば、ティム・バートン監督は、もちろんそう。
 チョコレート工場がオープンする場面で、ウォンカことデップ様がテープカットをします。チョキンとやって、はさみを右手に、はいポーズ。わあ、『シザーハンズ』だ(^0^)ティム・バートン、デップ様コンビの名作ですね。
 こんな場面もあります。工場ではテレビチョコレートを実験中。それは、チョコレートを電送し、テレビから取り出すことができるという代物。テレビ画面は、ものが実物より小さく映る。よって、ものすごっく大きな板チョコを、テレビ画面に、はい電送。
 というのは原作通りですが、これのバートン流描き方がおもしろい。映画のなかでのテレビ画面の映像はといえば、猿が何匹もウッホウッホとたわむれている原始時代。そこに空からドーンと大きな板チョコが落ちてきて、地面にザクッと突き刺さる、といった具合。ひゃひゃひゃ、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』のパロですね。
 その場面での工場の部屋の真っ白な背景も、そこで流れる音楽、リヒャルト・シュトラウスの『ツァラトストラはかく語りき』も、まさに『2001年~』仕様でした。
 そうそう、原作には出てこない、ウォンカのお父さんも出てきます。お父さんは歯医者で、息子のウォンカにチョコレートを禁止してる。ウォンカは、それがトラウマになっているという背景設定。
 このお父さんを演じているクリストファー・リー、そして、少年チャーリーの祖父、ジョーおじいちゃん役のデイビッド・ケリー。この二人が魅力的でした。年を重ねている俳優さんですごいなと思うのは、その存在自体が、役を超えている。役にはまっていないというわけではなくて、はまっているのに、超えている。年をとることって、ついついマイナスにとらえちゃうんですけど、こんなふうに魅力的な方を見ると、ああ、いいもんだなあと思います。
 映画のラストはハート・ウォーミングにまとめられていますが、そこにいたるまでの「ヘン」満載を楽しむ作品ですね。ああ、素敵だなあ、「ヘン」って……と、しごくフツージンの私は、ただただ、ダールに、バートンに、デップ様に、憧れるのでありました。
  
チョコレート工場_b0109481_451818.gifもう一本。こちらは観る予定ではなかったのですが、某日、前の用事と後の用事のまんなかが三時間ほど空いてしまって。近くの劇場の上映時間を調べたら、これがぴったりだったので入場。『シンデレラマン』。
 生真面目で熱い映画でした。一度スターダムにのしあがったけれど、骨折、大恐慌にみまわれ、いまは妻と三人の子を食わせることもままならない、そんな貧困のさなかにいる男に、再びボクシング・マッチのチャンスが……という、伝説のボクサーの実話をもとにした作品です。
 そのボクサー、ジム・ブラドックを演じるラッセル・クロウ、うまいス。光熱費も払えず、子どもを親戚にあずけるしかなくて、でも、なんとか子どもといっしょに暮らしたい……で、昔のボクシング関係の知り合いの人たちに金をめぐんでもらうシーンがあるんですけど、その場面のラッセル・クロウの表情を見たとき、おお、また、この人、オスカーをとるんじゃないかい、なんて思いました。
 ただ、この映画、王道っぽすぎて、私はちょいと引き気味で観ていました。でもボクシング場面は迫力ありまくりで、思わず身を乗りだしました。ボスッボスッというボディに入る音がよく響く。効果音抜群。ボスッボスッボコボコボコッ、いけいけ、おう! と、スカッとした感じで見終わりました。ラストは、これから観る方のために伏せておきます。
 で、エンディングロール。
 このとき、私はまわりの観客の方たちの様子を観察するのが好きです。いろんな反応を見ることができて、おもしろいんですね。
 私の右となりは、六十ちょい過ぎぐらいの男性でした。眼鏡をとって、ハンカチで目をおさえていました。私の左となりは、二十代後半かなと思える男性でした。手の甲で目をこすっていました。
 そうか、これってやっぱり泣く映画だったのね。感動的なラストシーンで涙のひと粒も流さず、「いけいけ、おう!」なんてノリのまま見終った私って、いったい……あ、もしかして、ちょっとだけヘンかも(笑)。
 ボクシングをあつかった映画では、ボクサーのマネージャーというのは大事でおいしい役どころで、達者な俳優が演じることが多いですが、この映画でも、マネージャー役のポール・ジアマッテイが実によかったです。ちょっとバナナマンの日村さんに似てました。あ、また話がお笑い方面に……(笑)。
 で、そっち方面にいった流れを受けて。
 ラーメンズの片桐仁さんは前からCMによく出ていますが、このところ「アサヒ新生」がひんぱんに流れていて、ウキウキ。
 愛しの小林賢太郎さんの「トヨタホーム」CMも、バージョンがいくつかあって、ドキドキ。しっかり録画してます(笑)。
 それにしても、とれないんですよねえ、ラーメンズのライブチケットって、人気ありすぎて……。
  
チョコレート工場_b0109481_056577.gif そうそう、あのチケットをとるのも、たいへんでした。ずいぶん前の話ですが、『ヘドウィグ』。今回書く前に7月のメッセージを読み直したら、『ヘドウィグ』にいく前だったんですね。あのステージを観にいったときは、私、夏風邪ひいてて、熱出してました。そして観て、さらに熱があがりました(笑)。素晴らしかったです! 三上博史さん。
 『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』。もともとはオフ・ブロードウェイのロック・ミュージカルで、映画化もされています。
 性転換手術に失敗して1インチが残ってしまったヘドウィグ。愛を渇望している彼は、トミーという男のコに恋をして、自分のロック魂を注ぎ込む。でもトミーはヘドウィグを裏切り……といったストーリー。
 そのミュージカルの、そして映画化でも主演、監督、脚本を担ったジョン・キャメロン・ミッチェルは、もちろん素晴らしいんですけれど、その彼に負けないぐらい素晴らしかったです、三上さん! 三上博史の『ヘドウィグ』になっていました。男でもない、女でもない性をもつ人間の心のありさまと生きざまを、哀しくせつなく激しく演じきっていました。歌もうまかったなあ。
 三上博史さんのステージには、もう、十年以上前でしたか、中野サンプラザのコンサートにいったことがあります。そのときは、客を置き去りにするような勝手なノリについていけなかったんですけど(笑)、『ヘドウィグ』は、客を巻き添えにする、包容力と迫力のある、最高のステージでした。美輪明宏さんのあとを継ぐのはこのひとかもしれない、なんて思いましたね。再々演、やってほしいです。また絶対、観にいきます。
 日本の俳優でウィリー・ウォンカを演じるとすれば、三上さんがいいな。ウォンカのヘンな感じ、エキセントリックな感じ、ちょっと哀しい感じ、ぴったりだと思います。
   
 チョコレートのおいしい季節になりました。

 ウォンカさんのチョコレート工場に、いつか私もいってみたいなと思う秋の夜……。
 今晩は、ホット・チョコレートでも飲みましょうか。
 日々気温が低くなりますが、みなさま、風邪などめしませぬよう気をつけてくださいね。

10月4日
by makisetsu | 2005-10-04 17:48 | 映画・舞台の感想など | Comments(0)