スウィーニー・トッド

 猟奇を、狂気を、描くのはむずかしいです。センスがないと、グロにまでもたどり着けず、目をおおうようなものになる確率が高いと思います。コワイのではなく、ヒドクて目をおおうのです。

 でもそれを、美しく描ける人もいます。
 江戸川乱歩。現代の作家では津原泰水氏。

b0109481_6554196.jpg そして猟奇を、狂気を、こんなにも美しく撮れる映画監督も、ここにいます。
 ティム・バートン。『スウイーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』
 オープニングのタイトルから、もう血まみれ。全編、ほぼ血まみれ。でもその血の色が美しい。実際の血の色よりずっと鮮やかな赤にしたのだと、ティム・バートンのインタビューにありました。
 いえ美しいのは、血の色だけではありません。なにかもう、こう、突き抜けているんですよ。スプラッターとかホラーとかいうんじゃない。そこを突き抜けちゃって、死と、そして生の、美というものが、まざまざと見えてくるような映画なんです。

 理髪師ベンジャミン・バーガー(ジョニー・デップ)は、彼の妻ルーシーに横恋慕したターピン判事(アラン・リックマン)に無実の罪をきせられ、島流しに。しかし脱出し、船乗りアンソニーに助けられ、15年ぶりにロンドンにもどってきます。
 面立ちも昔とは変わり、名前もスウィーニー・トッドと変えた彼は、ミセス・ラベット(ヘレナ・ボナム・カーター)のパイ屋の二階で理髪店を再開します。ミセス・ラベットは、彼の愛用していたカミソリを保管してくれていたのでした。
 スウィーニーが島流しにされた頃、まだ赤ん坊だった娘ジョアナは、美しく成長し、ターピン判事の家に囚われています。そして、スウィーニーの妻ルーシーは、いまは……。
b0109481_7232751.jpg 復讐の念に燃えたスウィーニーは、きらめくカミソリを手に次々と惨殺を繰り返していきます。パイ屋の女主人ラベットは、その死体を……。ううう(--;)
 一方、船乗りアンソニーは、ターピン判事の家の窓辺に佇むジョアナを見て、ひと目で恋に落ちます。街を歩きながら、彼女への恋心を歌いあげるアンソニー。

 そう、これ、原作はブロードウェイのミュージカルなんですね。
 作詞・作曲はスティーブン・ソンドハイム。
 船乗りアンソニーが『ジョアンナ』を歌う場面では私、『マイ・フェア・レディ』で、イライザに恋した青年が、イライザが住む家のそばを歩きながら、その想いを歌う『君住む街で』(作曲 フレデリック・ロウ)というナンバーを思い出しました。美しい曲です。
 それと、スウィーニーのことを愛するミセス・ラベットが、スウィーニーとの幸せな未来を夢見て歌う『海辺にて』もいい。「海のそばで暮らして、いっしょに年を重ねましょう」 ミセス・ラベットが夢想する海辺のシーンが、数々の殺戮場面とは対照的に、極楽のような色彩で描かれています。 しかしそんなラベットの愛の告白もスウィーニーの耳には入りません。彼の心を占めているのは……。
  えー、あとはぜひ本編をご覧ください。

 この作品の登場人物は誰もが深い想いをもち、一途で、しかし一途がゆえのその行いは……非道、残虐、陰惨、残忍。ああ、一途というのは、なんと哀しく、愚かなことでしょう。
 愛と生をベースにしながら、人間の暗部を容赦なく描いたこの映画。そこから浮かび上がってくる凄絶な美。まさに、「はんぱねえ!」(トータルテンボス・笑)作品です。
 ところで、ターピン判事の子分、役人バムフォードを演じているのは、『ハリポタ』シリーズのピータ・ペティグリュー役でもおなじみ、ティモシー・スポール。バナナマンの日村さんに似ています。あ、結局また、話がお笑いのほうに……(A^^;

b0109481_6562441.jpg そうだ、昨年夏に観た『ワールド・エンド』のことも少しだけ。 ストーンズのキース・リチャーズが、ジャックの父親役で出ていたのが感動! でした。ジョニーがキースをイメージしてスパロウ役を演じていたのはよく知られた話ですね。
 それと、前作『デッドマンズ・チェスト』では、特殊メイクというか被りものというか、全然ほんとうの顔が出ていなかった、深海の悪霊、大イカ役のダル・ナイでしたが、『ワールド・エンド』では、一瞬だけど、ほんとうのお顔が映ってよかったです(^-^)
 『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズは、一応、三作で終わりということだけど、ラストシーンからして、まだまだ続きができそうだけどなあ……。オーランド・ブルームの、あの子どもが成長し、なにか事件にまきこまれるとか。そこでまた、ジャック・スパロウの登場、なんてかたちでね。ま、それはさておいて。

b0109481_6571094.jpg ラストシーン…『スウィーニー・トッド』のラストシーンが目に焼きついて離れません。
 ティム・バートン、ジョニデコンビの映画はすべて観ています。私の好きな順位は、1位『シザーハンズ』、2位『エド・ウッド』、3位『スウィーニー・トッド』。(これを観るまでは、3位は『スリーピー・ホロウ』でした)
 ほかの監督が撮ったデップ様の映画もすべて観ていますが、バートンの映画よりいいと思ったものは数少ないです。
 ほんとうに、出会うべくして出会ったのだなあ……と、二人が組んだ映画を観るたび、しみじみ思うのでした。さて次作はどんなものになるのでしょう。楽しみです(^-^)

by makisetsu | 2008-02-11 07:13 | 映画・舞台の感想など | Comments(2)  

Commented by AIAI at 2008-02-11 22:51 x
先日の講座もありがとうございました。
雪の名古屋から戻りました。(笑)AIAIです。
一途さは誰もが持っている美しさだと思いますが、その思いは紙一重なんですね。考えさせられます。だけど、そういう心を持っている人って私、好きかもなぁ。。。血は苦手なんですが、そういうの大丈夫なつれをみつけてやっぱり見に行こうと思います。(一人は無理…)
先日の『あかし』と『かくし』とっても勉強になりました。今書いている作品も心プラス頭を使って書き直してみようと思います。
では、また次回講座よろしくお願い致します。
Commented by 牧野節子 at 2008-02-12 07:39 x
あ、名古屋、雪だったんですね~。でも楽しいときをすごされたことと思います。雪が背景だと、思い出って、強く残るような気がします♪
『スウィーニー・トッド』は、「かくし」がとても効果的に活かされた作品です。しかし血しぶきが、マジはんぱじゃないので(A^^; 覚悟なさってくらはいまへね。
それではまた次回に(^-^)/

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