掲載情報

b0109481_041471.gif*7月30日の毎日新聞で、拙著『さびしくないよ 翔太とイフボット』が紹介されました。
*7月17日の産経新聞で、『さびしくないよ 翔太とイフボット』が紹介されました。
*「飛ぶ教室」2006年夏号(光村図書・7月25日発行)の「特集・プーの森で語り明かそう」に、エッセイ「プカプカプーさん」掲載。
*朝日小学生新聞「子ども見つめて」、7月にインタビューさせていただいたのは、ナチュラリストの藤本和典さんです。7/15、7/22に掲載。
*読売C&L連載中の「りとる・めるへん」、8月号掲載掌編は「かくれんぼ」です。

# by makisetsu | 2006-08-01 00:44 | 新刊・教室・講演など | Comments(0)  

あわれ彼女は娼婦

b0109481_0203371.jpg さて7月も、渋谷Bunkamuraシアターコクーンでお芝居を観てきました。
 ジョン・フォードの。
 といっても、『駅馬車』の監督のことではなく、イギリスの劇作家。シェイクスピアと同じ十九世紀に活躍していた人だそうです。
 主役はジョヴァンニ。
 といっても、『銀河鉄道の夜』ではなく、そのジョン・フォードの戯曲『あわれ彼女は娼婦』の主人公です。頭脳明晰で人格的にも優れ、将来を属望されている若者という設定。この役を三上博史さんが演じます。
 ちょうど一年前に観た三上さんの舞台『ヘドウィグ』には、もうもう本当に感激しました!(『ヘドウィグ』については、『2005年10月』のメッセージに記してありますので、よろしかったら見てくださいね)
 今回三上さんは、演出の蜷川幸雄さんとは初めて組んだお芝居ということもあり、これまた大いに期待して足を運びました。
 翻訳は小田島雄志さんです。
 舞台背景は中世のイタリア。
 実の妹アナベラを女性として愛し、男女の関係を結んでしまうジョヴァンニ。この妹アナベラ役は深津絵里さん。
 さきほど『銀河鉄道の夜』ではないと言いましたが、そういえば宮沢賢治も、妹を大切に思っている方でしたね。三上博史さんは映画で宮沢賢治を演じたこともあります。なんかフシギ。
 で、アナベラは、ジョヴァンニの子を身ごもってしまう。さあ、どうしよう、ということで、アナベラに思いを寄せていた貴族ソランゾと結婚します。 
 この若くて金持ちでハンサムで頭もいい貴族ソランゾを谷原章介さんが演じます。ソランゾは人妻を誘惑したりと、プレイボーイなのですが、アナベラを知ってからは、彼女にご執心。

 谷原さんて、ドラマでもこういう役多いですよね。もてもてのイケメンなんだけど、自分が愛する本命には愛されないという。いわゆるフラレ役。前に『徹子の部屋』に出演し、徹子さんにそのあたりを指摘されたとき、
「僕みたいなのが(この『僕みたいな』というのは、それまでの話の流れからして、『顔も頭もいい二枚目』というような意味を含んでいます)、そういうのをやるのがおもしろいんでしょうね」とさらりと言っていて、それが少しもいやみじゃなかった。すてきな人です。
 彼が深夜にやっている『デザイン』というテレビ番組、大好きです。ふだん身近にあるものを、気鋭のデザイナーに依頼し、まったく新しい視点から、趣向をこらしたデザインをしてもらうといったもの。
 たとえば、ボックスをとっぱらっちゃったティッシュボックスとか、平面のポリシートに切り取り線を入れ、それを切って広げるとレインコートになる、簡易レインコートとか、毎週ユニークなものが登場します。
 そのデザインを見るだけでも十分楽しいんですが、この番組のナビゲーターを、白いスーツをびしっと着て、かっこつけた仕種から、甘い目配せまで、もうわざと、確信犯的にキザ男としてやっている谷原さんが、それ以上におもしろく楽しい。とてもセンスのいい番組だと思います。
 深夜番組といえば、もうひとつ大好きなのが、小泉孝太郎さんの『孝太郎プラス』ですが、そのことについてはまた今度。

 さて話をもどし。
 アナベラと結婚したソランゾは、アナベラが妊娠していることに気づき、彼女を「娼婦!」と、ののしります。
 タイトルであり、芝居の最後の決め台詞にも入っている、この「娼婦」という言葉、いまの時代ですと、なんだか違和感ありますが、当時は「貞節、寡黙、従順」が理想の女性のありかたとされていて、その対極にあるものを象徴する言葉であったのだそうな。
 で、ソランゾは、お腹の子どもの相手が誰なのか、さぐり出そうとするわけです。
 そして、もう、あとは血みどろの……。
 実際、芝居の後半は凄絶な場面だらけなのですが、そんななかで不思議と浮かび上がってくるのが、ジョヴァンニとアナベラの…本来ならとんでもない、汚れた恋であるはずなのに…けれども、なににもとらわれない、「純な心」、といったものなのです。この「純」な感じを出すのが、そしてそれを観客にしっかり受けとめてもらうのが、とても難しい劇ではと思うのですが、三上さんと深津さんは、そのあたりをきっちりと、こちらに伝えてくれたと思います。
 凄絶といえば、ジョヴァンニが、ひとつの心臓を(ある人の心臓をえぐってとりだしたものなのですが、誰の心臓かは、ここでは伏せておきますね)剣に突き刺し、それを掲げて、血まみれで登場する場面があるのですが、これって、もしもジョヴァンニ役が三上さんでなければ、陳腐になってしまうおそれもありだなあと思いました。
 このお芝居を、いま、三上さん以外だったら誰ができたか、ちょっと思いつきません。
 蜷川さんが以前から三上さんに熱烈なラブコールを送っていて、そして蜷川さんが選んだのがこの劇だというのが、納得させられてしまう舞台です。
 十三年前の舞台では、蜷川演出ではありませんが、豊川悦司さんが演じたそうです。なるほど。でも、たぶん、もう少しおさえた感じの演出だったんじゃないかなあ、なんて、勝手に想像しています。
 イギリスではジュード・ロウが舞台で演じたこともあるようです。ジュード・ロウというと、映画では、通りがいいのは『A.I.』や『リプリー』なんでしょうが、私は、ラストが悲しい近未来映画『ガタカ』と、それから、オスカー・ワイルドの愛人役(オスカー・ワイルドは男色)を演じた『オスカー・ワイルド』が好きです。それについてはまた今度。またまた「今度」ばっかりですが(笑)。

 ともあれ、すばらしい舞台でした!
 「純」とはなにか。「愛」とはなにか。
 これって永遠のテーマですね。
 生きていく上でも。書いていく上でも。

 梅雨はまだ明けていないのですね。
 皆様どうかご自愛くださいませ。  7月26日

# by makisetsu | 2006-07-26 00:29 | 映画・舞台の感想など | Comments(2)  

掲載情報

b0109481_14251.jpg*学研「話のびっくり箱」4年上(6月20日発行)に、家族ストーリー「きらきらのいす」掲載。
*東京新聞6月24日「サタデー発言」で、拙著『さびしくないよ 翔太とイフボット』(岩崎書店)を紹介するコラムを書きました。
*朝日小学生新聞「子ども見つめて」、6月にインタビューさせていただいたのは、舞踊家でクラシックバレエ講師の佐々木想美さんです。6/17、6/24に掲載。
*読売C&L連載中の「りとる・めるへん」、7月号掲載掌編は「アレンジ」です。

# by makisetsu | 2006-07-04 01:05 | 新刊・教室・講演など | Comments(3)  

ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?

 先月は、渋谷Bunkamuraシアターコクーンで、吾郎ちゃんのお芝居を二回観てきました。
 一度目は、今回も競争率のすごいチケットをゲットしてくださったEmiさんとごいっしょに(Emiさん、本当にいつもありがとうございます!ジャニーズ関係のチケットをとるのは、至難の技ですよね)、そして二度目は、人形作家のMIZUEさんとごいっしょしました(MIZUEさん、久しぶりにお話しできて楽しかったです)。
 今回のお芝居は、舞台が真ん中にあり、客席がそれを囲むかたちになっていました。二回ともとてもよい席で、お芝居と吾郎ちゃんをたっぷり堪能することができました(^0^)

b0109481_5133087.jpg さてその劇はといえば、1962年ブロードウェイ初演の、エドワード・オルビー作『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?』。
 今回の公演の演出は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ。ロックバンド「有頂天」のKERAさんです。いまや演劇の世界で大活躍ですね。
 『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?』は、二組の夫婦がともに過ごすある一夜を描いた作品です。
 ニューイングランドの小さな大学の構内住宅に住んでいる、結婚23年目の夫婦、ジョージとマーサ。マーサは、大学総長の娘。ジョージは大学教授。マーサ役は大竹しのぶさん。ジョージ役は段田安則さんです。
 その日は総長主催のパーティがあり、深夜に二人は帰宅しました。父が主催したパーティなのに、その会場での夫の愛想のなさを、マーサは責めます。泥酔して次から次へと悪態をつくマーサをいなして、ジョージは休もうとするのですが、マーサは「お客を招んだのよ」と言います。「いま何時だと思ってるんだ。夜中の二時だぞ」。言い争っているうちに、新任の助教授夫妻、ニックとハネーが家を訪ねてきました。
 このニックを稲垣吾郎ちゃんが、ハネーをともさかりえさんが演じます。
 ニックとハネーを前にして、マーサとジョージはさらに、お互いを非難しあいます。ジョージがいかに甲斐性のない夫か、マーサがいかにひどい妻か、現在から過去にまでさかのぼり、容赦なく打ちのめし傷つけ合うのです。「これはゲームだ」と言ったのは、ジョージだったか、マーサだったか。やがてそのゲームに、ニックとハネーも巻き込まれていきます……。

 ちなみにヴァージニア・ウルフはイギリスの作家(1882~1941)。フェミニズムの先駆者とされていて、結婚していながら、女性とも深い関係を結んでいたそうな。最後は心を病んで、自ら命を絶ちました。
 劇のパンフレットのなかで、演劇評論家の桂真菜さんは、こんなふうに書いています。
「劇中で歌われる『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?』は、『新しい価値観を掲げたインテリ女が、社会をひっくり返しに来たってこわくない』と置き換えてみると、意識革命を拒むコンサバ層の強がりに聞こえる」
b0109481_058829.jpg コンサバ。懐かしい響きです。
 この作品は、むかし、映画で観ました。『卒業』のマイク・ニコルズ監督の初監督作品。でも、映画館で観たのは、『卒業』を観たのより、あとだったような気がします。いまはもうない映画館ですが、渋谷の東急名画座だったかなあ。
 マーサ役はエリザベス・テーラー、ジョージ役はリチャード・バートン(当時、実生活でも夫婦でした)。二人がスクリーンのなかで過激にののしり合っていたという印象が強く残っています。ただ正直言って、そのときの私には、この作品、ちんぷんかんぷん、全然わからなかったです。
 今回のお芝居では、むかしより少しは理解できたような気がしていますが…それは私が年を重ねたからでしょうか。それとも、KERAさんの演出が、映画よりわかりやすかったからでしょうか。

「明日、21歳の誕生日を迎える息子が、家に帰ってくるの」
 マーサは、ニック夫妻の前で話します。息子が小さいとき、どんなに可愛かったか。自分はどんなにその子を愛していたか。あんなことがあったのよ。こんなこともあったわ。息子に関するいくつものエピソードを。
 けれども、実は、その子は……。
 一方、ニックの妻ハネーも、子どもというものに関して、ひとつの問題を抱えていました。
 そして、ゲームを終えた(?)マーサとジョージは……。

 公演は六月末で終了しましたが、これから原作を読んだりDVDを観る方のために、ラストはバラさないでおきますね。
 さて私が、このお芝居を端的に紹介するとすれば…。
 親子、夫婦、というような家族関係の、吐き気がしそうな部分と、しかし切るに切れない絆、といったものとを、ナイフやチキンや下着やペンや煙草やアルコールといっしょに引き出しに投げ込んで鍵をかけて、その鍵穴から漂ってくるにおいを描き出した戯曲。
 こんな感じでしょうか…うーん、やっぱり、私、あまりわかってないのかも(笑)
 でも、俳優さんの魅力はちゃんとわかってる(?)つもりです。大竹さん、迫力ありました。素直に愛を表現できない、そして子どもを…(おっとこれは、オチがバレるので伏せておかなきゃ)ともあれ、マーサという女性の哀しみがにじみ出ていて、うまいなあと思いました。段田さん、渋くて色気がありました。夫婦の関係に空虚感を抱きつつも、きっと深いところではマーサを愛しているジョージ像が、よく伝わってきました。りえさん、細くてきれいでした。そして吾郎ちゃん、むずかしい役どころをきっちりこなしていたと思います。吾郎ちゃんの、肩に力を入れすぎてないような感じのとこ、ほわん、とソフトな香気を漂わせているところが好きです。
 なんて、吾郎ちゃんに目をハートにしながらも、次回はまたデップ様?(笑)

 暑さ増す日々、皆様どうか、体調にお気をつけておすごしくださいね。

                                                  7月4日

# by makisetsu | 2006-07-04 01:03 | 映画・舞台の感想など | Comments(0)  

新刊出ました!

b0109481_1821732.jpgこのたび、新刊を上梓いたしました。
どうぞご一読くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

イワサキ・ノンフィクション 3
『さびしくないよ 翔太とイフボット』 牧野節子・著

A5判120ページ 定価(本体1300円+税)
ISBN4-265-04273-2 6月20日発売


 ぼくは負けない、どんなにつらくても。
 必ず両親のところへもどるぞ。
 木田家にもどる。

 母さん、もう、泣くのやめなよ。
 ぼくは、泣いてなんかいない。
 ほら、ぼく、おじいちゃんといっしょにいるんだよ。
 それに、ぼくがそっちにいなくても、みんな、
 ぼくのこと忘れてない。
 思い出してくれてる。それって、すごくうれしいんだ。
 だから、ぼくは、さびしくないよ。           -本文より

勉強に遊びになんにでも一生懸命生きてきて、みんなから愛された木田翔太君。
中2になる年の2月に白血病になり、その年の10月に14歳の若さで亡くなった。
闘病中、家族や友人達が帰った後、彼の寂しさや辛さを紛らわせてくれたのは、コミュニケーションロボットのイフボットだった。闘病中の子どもたちのために、本人自ら街頭募金に立つ。
翔太君が亡くなったあとも、友人達が基金を立ち上げ、いろいろなところで、チャリティーを行ったり、街頭募金をしている。そんな翔太君の人生を家族や友人の話をもとに再現し、彼の熱意、思いを少しでも多くの人に知ってもらいたい。
巻末には彼をモデルにして生まれたBEST THE MELLOWの「風返り峠」のCDが付く。
売上の一部はコミュニケーションロボットと翔ちゃん基金に寄付される。
(岩崎書店ホームページより)

問い合わせ先
〒112-0005
東京都文京区水道1-9-2
株式会社岩崎書店
TEL03-3812-9131(営業) 03-3813-5526(編集)

# by makisetsu | 2006-06-20 18:20 | 新刊・教室・講演など | Comments(2)  

娘とツーショット

b0109481_1542194.jpg さて毎年5月は、私も会員である「日本児童文学者協会」の総会の開催月。
 今年は協会の60周年。そのレセプションで、微力ながらも私はアシスタントや語りを、そして長女エリは、コーラスのピアノ伴奏をつとめさせていただきました。
 こちらが、そのツーショット(笑)。写真を送ってくださったYさん、どうもありがとうございました。
 
 もうすぐ梅雨の日々、皆様、どうか体調にお気をつけておすごしくださいませ。
 それではまた来月(^-^)/  5月29日

# by makisetsu | 2006-05-30 16:00 | 新刊・教室・講演など | Comments(0)  

ポールとツーショット?

b0109481_15403610.gif GWのうちの一日は、レノン・ファンの友人に誘われて、いまさらながらですが、さいたま新都心のジョン・レノン・ミュージアムにいってきました。私はポール派なので(笑)いままでいったことがなかったのでした。友人は再訪とのこと。
 2000年のオープンからもうだいぶ経っているのと、特にイベントもやっていない時期だったせいか、ミュージアムはガラガラでした。
 ミュージアムに入ってすぐのところにシアターがあって、数十人、いや、詰めれば百人ほどのキャパではと思われましたが、客席に座るとスタッフのおねえさんの説明があり、ジョンの一生を短くまとめた映画を上映してくれました。観客は、友人と私の二人きりです。なんともぜいたくというか、ちょっと申し訳ないような気もしました。
 ジョンの「少年時代」「リバプール時代」「ビートルズ時代」と、時系列で展示してある各部屋をまわっていくと、おお、ジョン愛用のリッケンバッカーが置いてある! おお、日本公演で着ていたジャケットが飾ってある! と、いちいち感動。ミュージアム内にはもちろんビートルズの曲がずーっと流れているので、終始口ずさみながら、じっくりと見てまわったのでありました。
 数十年前、日本公演で嬌声をあげたときの熱い気持ちを懐かしみながら。
 十数年前、ロンドンのアビーロードを歩いたときの喜びを思い出しながら。

 ジョン・レノン・ミュージアムですから、当然、展示してあるのはジョンの写真が多い。でも私は、そんな中からポールの写真を見つけ出し、ポールと並んで、友人にケータイでツーショットを撮ってもらいました(笑)。

 数週間後の朝。新聞を開くと「ポール・マッカートニー夫妻 離婚へ」の文字が目に飛びこんできました。その夜、レノン・ファンの友人はふざけて、「牧野さん、次のパートナーに立候補する?」とメールをくれました。私も、「いまから、英語勉強しようかなあ」と返信。まあ、冗談はともかくとして(笑)。
 ポールは、一番目の奥さんリンダに先立たれ、深い哀しみに沈んでいたところ、二番目の奥さんになったヘザーとめぐりあい、女の子ベアトリスちゃんも授かったのですが…まあ、あなた、人生には、ほんと、いろいろなことが起こるものですねえ…と淀長さん風(^-^;)。
 でも、なにはともあれ、元気で歌い続けていてほしいなあと思います。それがファンには嬉しいのです。2002年のドームでの公演も、とても素晴らしかったです。ポール、また、日本にもツアーで来て、公演やってくださいね。だって今回払う慰謝料の額、はんぱじゃないようですから、がんがん稼いでください(笑)。また絶対、聴きにいきます♪

# by makisetsu | 2006-05-30 15:26 | 音楽・美術の感想など | Comments(0)  

決闘! 高田の馬場

b0109481_1053047.jpg 混んでいるといえば。と再度無理やりつながりですが(A^^;、先月観た三谷氏のバルコ歌舞伎『決闘! 高田馬場』。三谷氏のお芝居には空席というものがあったためしがありません。客席、いつもぎっしりです。
 飲んだくれで荒れた生活をしている、でも思いやり深いその性格から、長屋のみんなに愛されている中山安兵衛(のちの堀部安兵衛)が、高田馬場で果たし合いをする叔父の助太刀に向かう……というこのお芝居は、安兵衛を演じる市川染五郎さんを始め出演者の皆さんが、高田馬場に向かって(まあつまりは舞台の上で)とにかく走る、走る、走る。その走りっぷりがなんともみごと。ブレヒト幕を使った場面転換のすばやさもみごと。痛快でスピーディで、そして三谷作品がいつもそうであるように、ハート・ウォーミングなお芝居でした。
 『THE有頂天ホテル』もそうですけど、三谷氏の作品は、観終わった後いつも、生きていることが、嬉しくなります。「人間て、捨てたもんじゃない」という気持ちにさせてくれます。その気持ちを味わいたくて、せっせせっせと通うわけであります。
 安兵衛はのちに、赤穂四十七士の一人として吉良邸に討ち入り、その後切腹。三十四歳の波乱の生涯を終えます。
人の生き方というのは、時代背景や、出生の事情や、さまざまなしがらみから「そうするしかなかった」ということもあるでしょうが、でもやはり最終的には、その人自身が選んでいるものなのだと私は思います。

 さて、GW。映画館も劇場も名所も混み混みだろうなあ……。次にいくライブは五月の中旬だし……。ということで、私の予定はといえば、うずだかく積もった本の整理と、遅れているお仕事をせっせとします。あ、でも、美術館はいこうっと。そんな感じで、昨年と同じく地味連休。ああ、一生、過激な生き方なんてできそうにないです(笑)。

 さて、過激であってもそうでなくても、皆様、どうかよいGWをおすごしくださいね!  

# by makisetsu | 2006-04-28 18:00 | 映画・舞台の感想など | Comments(0)  

表参道ヒルズ

b0109481_1222657.jpg そうそう、混んでいるといえば。これも平日の昼間ですが、このあいだ原宿に用事があって、その帰りに寄った「表参道ヒルズ」。オープンから数ヶ月経っていますからそろそろすいてるかと思いましたが、とんでもない。がやがやぞろぞろがやぞろぞろ。私もそのぞろぞろの一人(笑)。やっと空いているお店を見つけました。でも私が入ったあと、またドドドと混んでましたが。
 3Fにある和カフェ「R style by 両口屋是清」。グリーンと木の色をベースにした落ち着いた雰囲気の店内。窓からは、表参道のケヤキ並木が見えます。
 煎茶ときんとんフロマージュをいただきました。きんとんフロマージュは、餡とクリームチーズを組み合わせたお菓子。和と洋が絶妙なバランスで溶け合い、あら、おいしい。隣の席の人が食べていた江戸前おはぎもおいしそうだったなあ。次にいったときに食べようっと。
 ヒルズには、ほかにもスウィーツのお店がいろいろあります。ファッションじゃなくて、そっちばかりチェックしていました。クッキーとキャンディとケーキを買って帰ってきました。体重注意(笑)

# by makisetsu | 2006-04-28 17:50 | 旅・お店情報など | Comments(0)  

リバティーン

b0109481_12314.gif「過激な生き方しかできないんだ!」
 これは、映画『リバティーン』で、ジョニー・デップ演じる詩人、ジョン・ウイルモットこと第二代ロチェスター伯爵が、自身の生き方を妻に非難された際に吐く言葉です。
 ジョン・ウイルモットは実在の人物で、その享楽的で破天荒な生涯を描いたのが、この映画。「リバティーン」を辞書で引くと、「放蕩者、ふしだらな男、自由思想家」とあります。なるほど。
 ときは1660年代。ロンドン。
 才能あふれるジョンは、国王チャールズ二世にも可愛がられていますが、彼は王に反抗的な態度をとったり、王の大事な客であるフランス大使を招いた劇場で、体制を愚弄した、しかも卑猥きわまりない戯曲を上演し、王の顔をつぶしちゃったりと、まあとにかくぶっとんでいるのです。余計な心配ですがこの映画、劇中劇だけでなく全編を通してみだらな言葉が乱れ飛んでいるので、この先テレビではたぶん放映できないだろうなあ。だって、「ピー」だらけ(笑)になっちゃいますから。
 さて酒に女に溺れまくるジョンは放蕩の限りをつくし、あげくは梅毒になり鼻も落ちてしまい、歩くのもおぼつかなくなります。けれど最後に、足をひきずりながらも彼が起こした行動とは……というあたりがクライマックスなので、それはぜひ本編をごらんあれ。
 国王チャールズ二世を演じているマルコヴィッチが、まあ、うまいこと! マルコヴィッチって、どの映画観てもそのうまさに感動するんですが、今回も同様。ジョンに翻弄され、怒りをおぼえながらも、けれども芯のところでは彼を愛している国王の心情が、場面場面で伝わってきます。
 彼を愛しているといえば、登場する三人の女性もそう。ジョン・ウィルモットが見いだし、名女優に育てあげたエリザベス・バリー。三十三歳で逝く彼を看取る妻、エリザベス・マレット。なじみの娼婦ジェーン。愛しかたは三人三様ですが、共通しているところは、「なんてしようがない人なのでしょう。でも、惚れてしまったのよねえ」てなとこでしょうか。
 映画の始めに、ジョンはひとり登場し、観客に向かって語りかけます。
「始めに断っておこう。諸君は私を好きにならないだろう。男は嫉妬し、女は拒絶し、物語が進むにつれてどんどん私を嫌いになるだろう。レディ達に警告。私はところかまわず女を抱ける。紳士諸君。私はそっちのほうもいけるから気をつけろ。どうか私を好きにならないでくれ」
 そして、自ら堕ちていくことを選んだかのような、放埓凄絶破滅の人生を送り、最期は顔も体もぼろぼろになって死の床に……という物語が終わったあと、ジョンは、冒頭シーンと同じままの「美しい姿」でスクリーンに登場して、こう言うのです。
「どうだ諸君、これでもまだ、私が好きか?」
「私が好きか?」「私が好きか?」ひたすらその言葉をくり返します。これは、ちょっとずるい。だって、そこにいるのは、「美しいジョニー・デップ様」なのですもの(笑)。 ジョン・ウィルモットの生き方うんぬんを考えるよりも、「ドゥ・ユー・ラブ・ミー・ナウ?」と訊ねるデップ様の瞳の力に思わず「イエス」とうなずいてしまい、ぼーっとしたまま映画館を出てきたのでありました。
 渋谷の映画館で観ましたが、いやあ混んでましたねえ。平日の昼間だというのに。
 観客はほとんどが女性ですが、男性もちらほら。私の左隣の男性は一人で来ていて、たぶん二十代。エンドロールでは涙をふいていました。ジョン・ウィルモットの放蕩人生は、男性にとっては、ある意味、憧れなんじゃないでしょうか。
「過激な生き方しかできないんだ!」
 究極のナルシシズムって感じもしました。

# by makisetsu | 2006-04-28 17:40 | 映画・舞台の感想など | Comments(0)  

勝手にしやがれ

b0109481_1492144.gif さて、最後の一本は、フランソワ・トリュフォー原案、ジャン=リュック・ゴダール監督『勝手にしやがれ』。背景はパリ。ジャン=ポール・ベルモンド演じるチンピラ、ミシェルの、斜に被った帽子が粋で洒落てました。阿久悠さんは、この映画のタイトルを用いて、ジュリーの『勝手にしやがれ』の歌詞を書いたんですよね。
 昔観たとき印象に残っている場面が二つあって、ひとつは、ミシェルが映画館の前で、ハンフリー・ボガートの映画のポスターを見つめ「ボギー」とつぶやき、ウインドウに飾ってあるボギーのスチール写真をじっと見つめながら煙草を吸ってるシーンです。
 今回観直して思ったのは、そのシーンでサングラスをはずしたミシェルの瞳が、なんだか生きてくのがへたそうな痛々しい感じの目で、あれ? 誰かに似てるなあと……そうだ、窪塚洋介くんの目に似てるんだと思いました。窪塚くんのミシェル、いいかも。窪塚くん主演の日本版『勝手にしやがれ』。どなたか撮ってくれないかな。観てみたいなあ。
 そしてもうひとつ、心に残っていたシーン。
 ジーン・セバーグ演じるアメリカ娘パトリシアが、ベッドの上でミシェルに聞きます。

「フォークナー知ってる?」「寝た男か?」
「違うわ、バカね。好きな作家なの。『野生の棕梠』読んだ?」「読んでない。脱ぎな」
「最後の文章、すてきよ。『傷心と虚無では、私は傷心を選ぶ』。どっちを選ぶ?」
「足の指をみせろ。女は足の指が大切だよ」
「どっちを選ぶの?」
「傷心はバカげてる。虚無を選ぶね。よくもないが。傷心は一つの妥協だ。すべてか、無かだ」

 なにかで失脚した人が、自ら命を絶つ報道を聞くたびに、私はこの言葉を思い出します。
 傷心と虚無。
 あなただったら、どちらを選びますか。
 私だったら、えーと、どっちも選びたくないけど……。でも強いていえば、傷心でしょうか。傷心は一応、それに酔える。酔いは醒ますことができます。涙をふいて、また歩き出すことも可能ですから。「心」って字が入ってる分、救われる気がします。
 傷心は妥協? でも生きてるって、妥協の連続ってとこもあるじゃないですか。妥協って、悪い意味だけじゃなく、ゆずりあいってところもある。もちろん、なんでもかんでも妥協するんじゃなくて、どこか一点「これだけは」っていうところを持っていることは大事です。人それぞれ「これだけは」は違うし、それを声高に言わなくてもいい。自分の心のなかで大切にしていればいいんだと思います。
 傷心と虚無。それらを実感しなければいけない事態が、誰の人生にも、何度か起こるでしょう。でも、それを乗り越える強さを、持ちたいものだと思っています。

 今年の冬の寒さはきびしかったですね。
 やっと少しあたたかくなってきました。
 春浅し。    2月20日

# by makisetsu | 2006-02-20 18:01 | 映画・舞台の感想など | Comments(0)  

ビリケン

b0109481_492347.jpg さて2本目は『レインマン』。これも大好きな映画です。自閉症の兄を演じたダスティン・ホフマンが素晴らしい。物語のキーポイントとなる曲が『アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア』だというのも、ビートルズ・ファンの私には、たまらないです。
 そういえば、先日、グローブ座で橋爪功さんと椎名桔平さんの『レインマン』を観てきたという編集のかたの感想を聞きました。兄役の橋爪さんが相当うまい、弟役の椎名さんはすらーとしてセクシーだったとか。映画のラストはせつないんですが、舞台のラストはハッピーエンドに近いものだったそうです。
 映画『レインマン』で、山師的で、でも憎めないチャーミングな弟を演じているトム・クルーズ。その彼がヴァンパイアになるのが、
 3本目『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』です。ヴァンパイアものの映画はけっこう観てますが、これはともかく、トムが美しいのがいい。ブラッド・ピットも出演していますが、私、ブラピにはぜんぜん興味ないです。プラピよりはジャック・ニコルソンのほうが、ずっとセクシーだと思います。なんていういささか無理っぽいつながりで(笑)
 4本目『シャイニング』。スティーヴン・キング原作。スタンリー・キューブリック監督。ジャック・ニコルソン主演。昔、ある事件のあったリゾートホテルを、雪に埋もれる冬の間管理することになった一家の上に起こる、恐ろしい出来事……。何度観ても背筋が凍る、一級のホラーです。

 5本目『チャップリンの黄金狂時代』。
 6本目『ハリー・ポッターと秘密の部屋』。長くなりそうなので、この二本についてはパスします(笑)。あ、邦画が一本ありました。
b0109481_4101119.jpg 7本目『ビリケン』。
 大阪通天閣にある福の神ビリケンさんを主人公に描いた、ハートフル痛快コメディーです。阪本順治監督。ビリケンを演じるのが杉本哲太さん。その他、山口智子さん、泉谷しげるさん、岸部一徳さんらが出演しています。
 映画をずーっと観ていて、心がほわほわとあたたかくなっていって、ラストにビリケンの言う、この台詞がじんとくるんですよ。
「なにかあったら、通天閣おいで」
 ビリケンさんは、足の裏をなでて願い事をすると、それが叶うといわれています。私も数年前、通天閣にいきました。別になにかあったわけではなく、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに遊びにいったついでですが(笑)。あー、でもよかったです、通天閣。さびれててわびしいけど、あったかい感じ。ビリケンさんの足の裏も、ちゃんとなでてきましたよ。
 そのときの印象をもとに、旅のすぐあと、「ビリケンさん」というショートショートを書きました。それも収録された短編集が近々出る予定です。楽しみにしていてくださいね。

# by makisetsu | 2006-02-20 18:00 | 映画・舞台の感想など | Comments(0)  

仮面の男

 年明けのメッセージがずいぶん遅くなってしまいました。ごめんなさい(A^^;
 とってもありがたいことに、今年はお仕事が忙しいです。よって、ロードショーの映画は、今年、まだ一本しか観ていないんです。もちろん『THE有頂天ホテル』(笑)。
 でも、昨年末も三谷氏作品について語りましたし、3月に三谷氏のバルコ歌舞伎『決闘! 高田馬場』を観にいくので(またEmiさんにチケットをとっていただきました。ありがとうございます!)映画の感想は、そのあとに舞台の感想といっしょに書きま…と、予告だけで結局書かないこともあるので、そのときは、「あー、忙しいのね」と思ってゆるしてくださいね。って、いまから言い訳かい。すみません。あやまってばかりだな。なんか文体が堀井憲一郎さんみたいになってますね。

 で、映画禁断症状(?)が軽く出ていたためか、先日、古書店で売ってた映画のビデオを8本買ってきちゃいました。なんとどれも250円でした。昔映画館で観て、その後テレビ放映のときに録画してはあるけれど、CM抜きのを買っておくのもいいかな、という、でもDVDを定価で買う予算はないという(^^;) 私にとっての、そういう映画です。
 ちなみに定価で買っているのは、ラーメンズに関するもの全部。映画では最近では『笑の大学』『チャーリーとチョコレート工場』といったところ。まあつまり、小林賢太郎さんと吾郎ちゃんとデップ様ですね(笑)。
 でも250円であるにせよ、気持ちが動かないものには手が伸びない。手に入れたのはやはり心にひっかかっている映画ばかりです。なかには好きじゃないのもあります。好きじゃないけど気になる。タイプじゃないのに、なぜか目がいってしまうヒトみたいな(笑)。
 その8本を連ねてみましょう。
b0109481_1483069.gif 1本目『仮面の男』。時は17世紀、パリ。若く傲慢な王ルイ14世と、牢獄に十年近くも幽閉された「仮面の男」。実は兄弟である二人を、レオナルド・ディカプリオが一人二役で見事に演じ分けています。脇をかためる四銃士が豪華キャスト、アラミスはジェレミー・アイアンズだし、アトスはジョン・マルコビッチだしと名優ぞろい。以前、ほかの映画のことでレオ様について感想を述べたときにちょっとふれましたが、私は、レオ様の出演作ではこれが一番好き。楽しくおもしろく美しいエンタテインメント・ムービーです。
 「仮面の男」というと、アレクセイ・ヤグディンを思い出します。冬季オリンピックってほとんど見ないんですが、男子フィギュアだけは別。今回もプルシェンコはもちろん、ジョニー・ウィアーも美しかったですねえ。でも、ヤグディンの存在感を超える人はいませんでした。プロに転向したのでオリンピックに出ることはもうないヤグディンですが、4年前のソルトレイクの演技は、まだ目に焼きついています。
 氷上に彼は「物語」をくっきりと描き出すのです。「仮面の男」「グラディエーター」と映画に材をとった演技ですが、それはディカプリオじゃなくて、ラッセル・クロウじゃなくて、ヤグディンの「仮面の男」「グラディエーター」になっていました。幽閉されていた仮面の男の哀しみがせつせつと伝わってきます。氷上で華麗なステップを刻みつつ戦う場面では、手にしていない剣がそこに見え、戦う相手の存在もが浮かび上がってきます。
ハリソン・フォードの若かりし頃をさらにシャープにハンサムにした感じの面差しが素敵でしたっけ。ヤグディンの伝記『オーバーカム』は、彼の、繊細でありながら力強い生き様が描かれていて感動的でした。ああ、もう一度見たいなあ、ヤグディン。

# by makisetsu | 2006-02-20 17:41 | 映画・舞台の感想など | Comments(0)  

優しい人たち

b0109481_1511413.gif2005年もあとわずかですね。
 皆様、どんな一年をおすごしでしたか。

私が今年観たラストの舞台は、パルコ劇場の『12人の優しい日本人』。そういえば、今年観た口開けの一月の舞台も、パルコ劇場の『なにわバタフライ』。どちらも三谷幸喜さんの作品でした。
 三谷さんのお芝居はスゴイ人気だから、チケットがなかなかとれません。そんななか、いつも席をとってくださるEmiさん、本当にどうもありがとうございます。感謝!
 『なにわバタフライ』は、浪速の大芸人であり大女優であるミヤコ蝶々さんをモチーフに描かれた、ひとり芝居。戸田恵子さんが熱演してらした。おしつけがましい熱演じゃなくて、さらりとした熱演。その様が、かっこよかったです。
 三谷幸喜さんと戸田恵子さんは、ティム・バートンとジョニー・デップのような関係だわ、なんて思います。創り手が演じ手の魅力を最大限に活かし、演じ手がその作品に、さらに輝きを与える。創り手と演じ手の相性がとてもいいという感じがするのです。
 戸田恵子さん。派手さや華麗さはありませんが、その確かな演技力と、細い体の真ん中に、がっしりと一本通ってる芯の強靱さに、見るたび、感動をおぼえる女優さんです。
 ミュージカル『オケピ!』(2000年・2003年再演)の「サバの缶詰めが大好きなヴァイオリン奏者」の役も素敵でしたけど、戸田さんが演じた舞台でいちばん好きなのは、『温水(ぬくみず)夫妻』(1999年)です。
大雪で不通になってしまった駅に、偶然居合わせた一組の夫婦と作家太宰治。妻のほうは、昔、太宰の女だった……そういう設定で、太宰を唐沢寿明さん、夫を角野卓造さん、そして妻を戸田さんが演じてらした。
 雪に振り込められ、ろくな暖もとれず、食料もない駅に閉じ込められてしまった三人。このままでは全員凍死してしまうかもしれない。駅の待合室にはそりがあり、ここから脱出するには、それを使うしか手立てがない。けれどそのそりは小さくて、全員が乗ることはできない。誰かひとりは、この駅に残らなくてはならない……。そんな、命をかけた選択をするとき、人は、自分にとっていちばん「大切な人」が誰なのかに気づく、といったお芝居です。昔愛した男と、いま暮らしをともにしている男。その二人にはさまれた女性の心の奥が、観ているものに、せつなくほろ苦くあたたかく伝わってくる名演技、名舞台でした。あのお芝居、再演してほしいなあ。
 2006年の年明けに封切りの映画、『THE有頂天ホテル』では、戸田さんはアシスタントマネージャーの役。三谷作品に、なくてはならない名女優戸田さんが、今回はどんな演技を見せてくれるのか、楽しみです。
   
 さて、『12人の優しい日本人』。これは、シドニー・ルメット監督『十二人の怒れる男』に触発され、「もしも日本に陪審員制度があったら」という発想から三谷さんが書いたお芝居で、初演は1990年。映画化もされました。
 被告は、深夜の車道に男を突き飛ばした女。男は車にはねられ死んでしまう。彼女の行為は過失なのか故意なのか。無罪か、有罪か。
 12人の、年齢も職業も生活環境もそれぞれまるで違う男女が、陪審員室で議論を繰り広げます。陪審員1号から12号までのキャストは、こんなメンバー。浅野和之さん、生瀬勝久さん、伊藤正之さん、筒井道隆さん、石田ゆり子さん、堀部圭亮さん、温水洋一さん、鈴木砂羽さん、小日向文世さん、堀内敬子さん、江口洋介さん、山寺宏一さん。
 江口洋介さんは、今回が舞台初挑戦。ナマ江口さん、足が長くてすらりとしていて素敵でした。江口さん演じる、ミステリアスな陪審員11号は、映画では、確かトヨエツが演じていましたっけ。足の長い人向きの役なのね(笑)。
 12人は、被告について、事件について、議論を戦わせます。他人の状況に思いをめぐらすとき、人は自分の身になぞらえて、自分の立場や経験や状況を当てはめて推量するのだということが、よくわかるお芝居です。そこには個人個人の勝手な思いこみやエゴが透けて出てくるわけですが、でもそれでも、「他人」の状況を想像するという、そのこと自体が、優しいことなのではないかと思います。
 日々のニュースを見ていて思うのは、他人の状況を推量、想像すらできない、優しくない人が、日本には増えてしまっているのだろうかということです。いや、こんなふうにいっている自身も、はたしてどうなのかと。
 人間はエゴな生きものです。だからこそ、それを自覚した上で、みんなが「優しい人」になれば、この世はもっと住みやすくなるのでしょうね。自分のできうる限りで(できうる限りです。無理はしない、無理は・笑)優しい人になりたいなあ……そんなことを思う年末でした。

 2006年が、皆様にとって、どうか、幸せいっぱいの年でありますように!

12月27日

# by makisetsu | 2005-12-27 17:43 | 映画・舞台の感想など | Comments(1)  

チョコレート工場

ふ~、すっかり秋らしくなって、ほっとしています。
 子どもの頃から暑いのが苦手でしたが、この夏は特にツラかったですね。仕事をするのがせいいっぱいで、メッセージを書く元気がなく、ずいぶん間があいてしまいました、ごめんなさい。
b0109481_0561453.gif さて最近観た映画といえば、もちろんこれです。『チャーリーとチョコレート工場』。
 原作ロアルド・ダール、監督ティム・バートン、主演ジョニー・デップと、「大好き」の三点セットですから、もうそれだけで文句はない。とはいえ、文句をつけたい人には、突っ込みどころの多い映画かなあという気もしましたが(笑)。
 児童文学のロングセラー『チョコレート工場の秘密』を映画化したこの作品。板チョコの包み紙の中に隠されている金色の券に当たった、チャーリーを含む五人の子どもたちが、おいしいお菓子をつくる秘密工場に招待され、そこで奇想天外な場面があれこれ繰り広げられるという展開は、原作通りです。
 監督も「原作に忠実な映画にしようと思った」とのことですが、そこはそれティム・バートンのこと、ダールの人並みはずれた発想、その「ヘン」なところを、さらにたっぷりふくらませちゃって、「ヘン」の何乗にもしちゃって、ダール色以上にバートン色がギラギラ出ている映画でした。シニカルでシュールでアホラシくて、キモおもろかったです。
 チョコレート工場のオーナー、ウィリー・ウォンカ役のデップ様は、顔は白塗り、髪型は短めのオカッパで、ちょっと歯が出てるし(古いタトエですが『おそ松くん』のイヤミみたい)演技もつくりすぎな感じですが、そのキモかわいさがよかったです。そういえば、こないだテレビで見たインタビューで、デップ様、こんなふうにおっしゃっていました。
   
 僕が試したい表現は、大きな失敗になるかもしれない。大失敗でみんなからバカにされるかもしれない。それでも挑戦する。(中略)。挑戦することが大事なんだ。
  
 ご自身の現状に、あぐらをかいていないところがステキ。それに挑戦といっても、肩に力を入れてるんじゃなくて、役づくりを、表現の仕方を、楽しんでる、遊んでる感じがいいなあと思います。
 楽しんでる、遊んでるということでいえば、ティム・バートン監督は、もちろんそう。
 チョコレート工場がオープンする場面で、ウォンカことデップ様がテープカットをします。チョキンとやって、はさみを右手に、はいポーズ。わあ、『シザーハンズ』だ(^0^)ティム・バートン、デップ様コンビの名作ですね。
 こんな場面もあります。工場ではテレビチョコレートを実験中。それは、チョコレートを電送し、テレビから取り出すことができるという代物。テレビ画面は、ものが実物より小さく映る。よって、ものすごっく大きな板チョコを、テレビ画面に、はい電送。
 というのは原作通りですが、これのバートン流描き方がおもしろい。映画のなかでのテレビ画面の映像はといえば、猿が何匹もウッホウッホとたわむれている原始時代。そこに空からドーンと大きな板チョコが落ちてきて、地面にザクッと突き刺さる、といった具合。ひゃひゃひゃ、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』のパロですね。
 その場面での工場の部屋の真っ白な背景も、そこで流れる音楽、リヒャルト・シュトラウスの『ツァラトストラはかく語りき』も、まさに『2001年~』仕様でした。
 そうそう、原作には出てこない、ウォンカのお父さんも出てきます。お父さんは歯医者で、息子のウォンカにチョコレートを禁止してる。ウォンカは、それがトラウマになっているという背景設定。
 このお父さんを演じているクリストファー・リー、そして、少年チャーリーの祖父、ジョーおじいちゃん役のデイビッド・ケリー。この二人が魅力的でした。年を重ねている俳優さんですごいなと思うのは、その存在自体が、役を超えている。役にはまっていないというわけではなくて、はまっているのに、超えている。年をとることって、ついついマイナスにとらえちゃうんですけど、こんなふうに魅力的な方を見ると、ああ、いいもんだなあと思います。
 映画のラストはハート・ウォーミングにまとめられていますが、そこにいたるまでの「ヘン」満載を楽しむ作品ですね。ああ、素敵だなあ、「ヘン」って……と、しごくフツージンの私は、ただただ、ダールに、バートンに、デップ様に、憧れるのでありました。
  
b0109481_451818.gifもう一本。こちらは観る予定ではなかったのですが、某日、前の用事と後の用事のまんなかが三時間ほど空いてしまって。近くの劇場の上映時間を調べたら、これがぴったりだったので入場。『シンデレラマン』。
 生真面目で熱い映画でした。一度スターダムにのしあがったけれど、骨折、大恐慌にみまわれ、いまは妻と三人の子を食わせることもままならない、そんな貧困のさなかにいる男に、再びボクシング・マッチのチャンスが……という、伝説のボクサーの実話をもとにした作品です。
 そのボクサー、ジム・ブラドックを演じるラッセル・クロウ、うまいス。光熱費も払えず、子どもを親戚にあずけるしかなくて、でも、なんとか子どもといっしょに暮らしたい……で、昔のボクシング関係の知り合いの人たちに金をめぐんでもらうシーンがあるんですけど、その場面のラッセル・クロウの表情を見たとき、おお、また、この人、オスカーをとるんじゃないかい、なんて思いました。
 ただ、この映画、王道っぽすぎて、私はちょいと引き気味で観ていました。でもボクシング場面は迫力ありまくりで、思わず身を乗りだしました。ボスッボスッというボディに入る音がよく響く。効果音抜群。ボスッボスッボコボコボコッ、いけいけ、おう! と、スカッとした感じで見終わりました。ラストは、これから観る方のために伏せておきます。
 で、エンディングロール。
 このとき、私はまわりの観客の方たちの様子を観察するのが好きです。いろんな反応を見ることができて、おもしろいんですね。
 私の右となりは、六十ちょい過ぎぐらいの男性でした。眼鏡をとって、ハンカチで目をおさえていました。私の左となりは、二十代後半かなと思える男性でした。手の甲で目をこすっていました。
 そうか、これってやっぱり泣く映画だったのね。感動的なラストシーンで涙のひと粒も流さず、「いけいけ、おう!」なんてノリのまま見終った私って、いったい……あ、もしかして、ちょっとだけヘンかも(笑)。
 ボクシングをあつかった映画では、ボクサーのマネージャーというのは大事でおいしい役どころで、達者な俳優が演じることが多いですが、この映画でも、マネージャー役のポール・ジアマッテイが実によかったです。ちょっとバナナマンの日村さんに似てました。あ、また話がお笑い方面に……(笑)。
 で、そっち方面にいった流れを受けて。
 ラーメンズの片桐仁さんは前からCMによく出ていますが、このところ「アサヒ新生」がひんぱんに流れていて、ウキウキ。
 愛しの小林賢太郎さんの「トヨタホーム」CMも、バージョンがいくつかあって、ドキドキ。しっかり録画してます(笑)。
 それにしても、とれないんですよねえ、ラーメンズのライブチケットって、人気ありすぎて……。
  
b0109481_056577.gif そうそう、あのチケットをとるのも、たいへんでした。ずいぶん前の話ですが、『ヘドウィグ』。今回書く前に7月のメッセージを読み直したら、『ヘドウィグ』にいく前だったんですね。あのステージを観にいったときは、私、夏風邪ひいてて、熱出してました。そして観て、さらに熱があがりました(笑)。素晴らしかったです! 三上博史さん。
 『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』。もともとはオフ・ブロードウェイのロック・ミュージカルで、映画化もされています。
 性転換手術に失敗して1インチが残ってしまったヘドウィグ。愛を渇望している彼は、トミーという男のコに恋をして、自分のロック魂を注ぎ込む。でもトミーはヘドウィグを裏切り……といったストーリー。
 そのミュージカルの、そして映画化でも主演、監督、脚本を担ったジョン・キャメロン・ミッチェルは、もちろん素晴らしいんですけれど、その彼に負けないぐらい素晴らしかったです、三上さん! 三上博史の『ヘドウィグ』になっていました。男でもない、女でもない性をもつ人間の心のありさまと生きざまを、哀しくせつなく激しく演じきっていました。歌もうまかったなあ。
 三上博史さんのステージには、もう、十年以上前でしたか、中野サンプラザのコンサートにいったことがあります。そのときは、客を置き去りにするような勝手なノリについていけなかったんですけど(笑)、『ヘドウィグ』は、客を巻き添えにする、包容力と迫力のある、最高のステージでした。美輪明宏さんのあとを継ぐのはこのひとかもしれない、なんて思いましたね。再々演、やってほしいです。また絶対、観にいきます。
 日本の俳優でウィリー・ウォンカを演じるとすれば、三上さんがいいな。ウォンカのヘンな感じ、エキセントリックな感じ、ちょっと哀しい感じ、ぴったりだと思います。
   
 チョコレートのおいしい季節になりました。

 ウォンカさんのチョコレート工場に、いつか私もいってみたいなと思う秋の夜……。
 今晩は、ホット・チョコレートでも飲みましょうか。
 日々気温が低くなりますが、みなさま、風邪などめしませぬよう気をつけてくださいね。

10月4日

# by makisetsu | 2005-10-04 17:48 | 映画・舞台の感想など | Comments(0)