『国民の映画』&『ろくでなし啄木』

『国民の映画』&『ろくでなし啄木』_b0109481_16522070.jpg三谷幸喜氏生誕50周年の2011年は、氏の新作が目白押しです。
三谷氏の舞台のチケットは大人気で、手に入れるのがむずかしいのですが、彼のお芝居のみならず、常日頃から実にたくさんの舞台を観ていらっしゃる友人のEmiさんが、いち早くゲットしてお声をかけてくださいます。Emiさん、いつもほんとうにありがとうございます!

そのおかげで観ることができた2本です。
先月の『国民の映画』は、パルコ劇場。

ときは1940年代。背景は、ベルリン郊外の1軒の別荘。
舞台は、ゲッペルスが、従僕のフリッツに命じ、映写機を操作させて、チャップリンの『黄金狂時代』のフィルムを観ている場面から始まります。

ヒトラー内閣がプロパガンダのためにつくった宣伝省の初代大臣であるパウル・ヨゼフ・ゲッベルス(小日向文世さん)は、宣伝大臣として凄腕であり、また、無類の映画好きでもありました。
彼がいちばん好きな映画は、『風とともに去りぬ』でした。

その晩、ゲッペルスは、客たちを迎え、ホームパーティを開きます。
招かれた客たちは、映画関係者を中心に数人。
権力におもねる俗物の映画監督。国民に人気の作家(エーリヒ・ケストナーです)。ナチスに祭り上げられた若手の女性監督。伝説の名優、などなど…。

集まった客たちにゲッペルスは、彼らを集めた理由を話し始めます。
自分は、最高のキャストとスタッフを使って、理想の映画を製作したい。
アメリカ人がつくった『風とともに去りぬ』を超える映画、ドイツ国民が誇りに思う「国民の映画」をつくりたいのだと…。

小日向さんをはじめとして芸達者の俳優さん揃い。風間杜夫さん、段田安則さん、白井晃さんら、総勢十二人が、ほぼ出ずっぱりの、重厚で見応えのある舞台でした。

ゲッペルスの従僕フリッツ役の小林隆さんが、特にいいなあ! と思いました。
お芝居の前半では、パーティの面々から一歩ひいたところに立っている、その冷めた目がユーモラスで楽しく、終盤では、彼の内在している怒りと悲しみというのが、静かに、深く伝わってきました。

ヒトラーは登場しませんが、登場人物たちの会話のなかで、「あの方」という呼ばれ方で、何度も出てきます。
ユダヤ人監督フリッツ・ラングの名も、何度も出てきます。
この劇に登場するのは、実在した人たちばかりですが、唯一の創造された人物が、従僕のフリッツで『国民の映画』&『ろくでなし啄木』_b0109481_16564136.jpgす。フリッツ・ラングと同じ名にしてあるのですね……。

私はフリッツ・ラングの映画で観たのは、『メトロポリス』だけなので、他のももっと観てみようと思いました。


先々月に銀河劇場で観た『ろくでなし啄木』は、26歳で夭逝した歌人石川啄木の、実は女好きで金銭にもルーズだったという一面が前面に出ている作品。
恋と友情、だましだまされる人間関係が、小気味よいテンポで描かれています。

才能はあるけれど、病弱で貧しい啄木を藤原竜也さんが、啄木の恋人を吹石一恵さんが、啄木の恋人に心を寄せながらも、啄木を支える、友情厚い男を中村勘太郎さんが演じる、若さあふれる三人芝居。
汗まみれで舞台を動き回っている勘太郎さんがすてきでした(^-^)/
by makisetsu | 2011-04-23 16:57 | 映画・舞台の感想など | Comments(0)