新美南吉「うた時計」

本日は、新美南吉「うた時計」を朗読しております。

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この作品について、拙著で書いたものがありますので、その一部を紹介させていただきますね。


=牧野節子『子や孫に贈る童話100(青弓社)8章「言葉の力」より=

(前略)

作者の新美南吉は、「ごんぎつね」や「手袋を買いに」のお話でよく知られていますね。

「うた時計」とは、オルゴールのことです。

 二月の野中の道で行き合った少年と、三十四、五の男の人。男の人が声をかけ、少年は人なつっこい笑顔で応え、二人は話し始めます。男の人は自分のことをあまり話しませんが、少年は「廉」という自分の名前やその意味など屈託なく話します。

 少年は男の人のオーバーの大きなポケットを見て、「あったかい? 手を入れてもいい?」と聞きます。男の人は笑いながらうなずきます。ポケットのなかは、そんなに温かくはなく、なにかかたいものが入っていて、少年がさわると音楽が流れだしました。

 男の人はびくっとして、きょろきょろあたりを見回します。美しい音色を奏でていたのは、ポケットのなかのうた時計でした。

 少年は、自分がよく遊びにいく薬屋のおじさんの家にも、これと同じようなうた時計がある、と無邪気に話します。そして薬屋のおじさんがときどき口にしている息子のことも。

「不良少年になってね、学校がすむとどっかへ行っちゃったって」

 それはもうずいぶん前のことなのだということでした。

 やがて道が分かれているところに来て、ふたりは「さいなら」と別々の道を行きます。

 けれどしばらくすると、男の人が遠くから少年を呼び止めます。もどった少年に、男の人は頼むのでした。じつは昨夜、薬屋で泊めてもらったのだけど、朝出るときあわてて、間違って薬屋の時計を持ってきてしまった。だから、薬屋に返してくれないか。うた時計とそれからこれもと、オーバーの内ポケットから懐中時計を出し、少年に手渡すのでした。

 このあとの二人の会話を読むたびに、私はいつも胸がつまります。


「坊、なんて名だっけ」

「清廉潔白の廉だよ」

「うん、それだ、坊はその清廉……何だっけな」

「潔白だよ」

「うん、潔白、それでなくちゃいかんぞ。そういうりっぱな正直な大人になれよ。じゃ、ほんとにさいなら」


(中略)

 極道の人生を歩んできてしまった男の人が、たどたどしく言う「清廉潔白」という言葉が心に染みます。親が子どもの名に込める思い、というのも伝わってくる作品です。

(後略)


新美南吉の作品はほかに、二ひきの蛙飴だま木の祭りひとつの火蟹のしょうばい去年の木子どものすきな神さまも朗読しております。

あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。


「牧野節子のYouTube部屋」

https://www.youtube.com/@makisetsu

よろしかったらどうぞおつきあいくださいませ(^-^)/🎵



by makisetsu | 2023-01-27 19:09 | YouTube部屋 | Comments(0)