ターミナル

あけましておめでとうございます。
 2005年はどうか、「災」ならぬ「愛」の年になりますように。
 年も明けて早一週間、
ターミナル_b0109481_204658.gif昨日(7日)の昼は大学の補講、夜は某所でルポの取材でした。そのあいだ数時間あったので、渋谷で『ターミナル』を観てきました。スピルバーグ監督の作品を観るのは、3年前の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』以来でしょうか。

『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は、60年代に実在した天才詐欺師フランクをレオナルド・ディカプリオが、そしてフランクを追いかけるFBI捜査官をトム・ハンクスが演じた、痛快エンタテインメントとして文句のつけようのない映画でした。

十七歳の詐欺師フランクは医師や弁護士やパイロットに変装して、まわりの大人たちをまんまとだまし、偽造小切手で大金をせしめていくのですが、パイロットに扮したディカプリオが、もう最高! その制服姿の凛々しいこと。別に私、制服フェチではありませんが(笑)ああ、ディカプリオってやっぱり美しいわ、そして演技もたいしたもんだわ、としみじみと思った一作でした。ちなみに私がレオ様の映画で一番いいなと思っているのは『仮面の男』ですが、レオ様話をするとかなり長ーくなるので(笑)それはまた別の機会に。

 スピルバーグ監督の映画は、いつも、とってもわかりやすい。そこが好きです。彼は多様な映画を撮りますが、なかでも私は、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』や今回の『ターミナル』のような軽妙洒脱な映画が好き。大げさでなく重すぎず、長すぎない(笑)。胃にこたえずにさらりと消化できます。

ターミナル_b0109481_211937.gif 『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』では渋く男っぽいFBI捜査官だったトム・ハンクス、今作『ターミナル』では、東欧のクラコウジアという国からNYにやってきた、素朴な男ビクターを演じます。
 あるひとつの目的を持ってNYにやってきたビクターは、けれど空港に着いたとたん、そこで足留めをくらってしまいます。クラコウジアでクーデターが起こり、事実上、国が消滅して、パスポートが無効になってしまったからです。

  ターミナルから一歩も出られないという事態に陥った彼は、出ることができる日を待ちながら、そこで生活を始めます。
 お腹をすかせたビクター。食べるものは手持ちのクラッカーしかない。そのクラッカーを食べるシーンがいいんですよ。クラッカーにケチャップやマスタードをぬりながら何枚も重ねて、一番上をぎゅって押さえると、クラッカーの穴から中身がプチュプチュって出てくる、これがなんとも、おかしく、哀しい。ビクターのキャラと状況を象徴しているようにも見えて。そしてその食べ方から、ビクターの育ってきた家庭も見えてきて。映画の中のこういう「小技」って大拍手したくなっちゃうんだけど、映画館でそれやるわけにもいかないから、心の中で大拍手してました。

 「Life is waiting」(人生は待つこと)というのがこの映画のキャッチ・コピーですが、ビクターはただ漫然と時間をすごしているわけではなく、いつも前向きに行動しながら、待っています。
 まるで英語ができなかったビクターですが、本と首っ引き、空港内のテレビからの音も参考にして、英語がみるみるうまくなっていきます。始めは彼をうさんくさく思っていた空港職員の人たちも、やがて彼のピュアな人柄に魅せられていきます。彼らとの交流のうちで、食事もできるようになり、仕事も見つけ、デートのためのスーツまで新調するビクター。そう、ビクターはターミナル生活のなかで、一人のフライトアテンダントに恋までしちゃっていたのです。
 
  そのフライトアテンダントを演じるのは、美しいキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ビクターを空港から追い出して逮捕させたいと思っている警備局主任役はフランク・ディクソン、と脇役にも魅力的な俳優さんたちが揃っていますが、ピカイチは、空港清掃員グプタ役のクマール・パラーナ。私、この俳優さんは、この映画で初めて知りました。プロフィルを見ると、前は軽業師、ショーマンだったとか。この映画のなかでも、ジャグリングはするわ皿回しはするわで大活躍。1918年生まれとありますので80代後半なのですね。全身が「味」になっている、いい俳優さんだなあと思いました。
 
  これから観る方に、あまりネタバラシしてもいけないけれど、ラストのジャズのシーンも、本当にいいスよ。
 
  友情に恋に家族愛。さまざまな「愛」が、重すぎず、大げさでなく、ほどよいぬくもりでじんわりと伝わってくる映画。新春に心をあたためたい方はぜひどうぞ。って、私はドリームワークスの宣伝員か(笑)。
 ちなみにトム・ハンクス主演の映画で私が一番好きなのは、88年の『ビッグ』です。デパートのおもちゃ売場の床にある、踏むと音の出る大きな鍵盤をトムが足で演奏する場面が、すごく素敵なんですよね。あの頃のトムはまだ若くて、お腹も出ていなかった(笑)。
 まあ、お腹は出ていてもまだまだチャーミングなトム。今作では泣き顔がよかったなあ。男の人の泣き顔って好きです。『僕の生きる道』のツヨポンの泣き顔や、もうずいぶん前の野島ドラマ『高校教師』の真田広之さんの泣き顔にも心をグイとつかまれたことがあります。泣き顔話をすると長ーくなるので、それもまた別の機会に(笑)。

「Life is waiting」
 深い言葉ですね。
 あなたはなにを待っていますか。
 待ちながらなにをしていますか。

 始発した2005年が、皆様にとって幸せな一年でありますように。
 今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

1月9日
by makisetsu | 2005-01-09 18:01 | 映画・舞台の感想など | Comments(0)